ISLISシンポジウム報告

2012/03/18 「森になる」プレゼンテーションとシンポジウム報告

○日時:2012年3月18日(日)10:00-11:45

○場所:横浜国立大学

第33回生命情報科学会(ISLIS)シンポジウム

横浜国立大学 工学部講義棟A棟 2階 

「森になる」における超越的な与える喜びの実践
尾崎真奈美 河野秀海 甲田烈 小野寺哲夫

 本日の天候は曇/小雨であり、また2日目の午前中ということであったが、尾崎真奈美を座長とする「森になる」シンポジウムは、定刻どおりにスターした。

 まず、座長の尾崎の方から、今回のシンポジウムの目的と主旨、および4人のシンポジスト全員の報告のポイントをコンパクトに概説した。非常に手際よく、それぞれの報告の要約をし、はじめてのこのようなテーマの報告を聞く方々への丁寧な導入になったと思われる。
 座長からの導入後、早速、1人目のシンポジストである河野秀海による「森になる」運動の成り立ちから、このような実践を提案するまでの経緯としての日本と世界における樹木葬や散骨などの実践例が、美しい写真とともに軽快に報告された。その上で「森になる」運動の具体的な目的と実践方法などについて言及した。従来型の、いわゆるお墓の寿命がどんどん短くなり(現在、お墓の寿命は50年とも言われているという)、次第にお墓を守る人がいなくなってきているという。そして、無縁仏となったお墓は、墓地の一角に山のように集められて無残な様相を呈するのであるという。だったら、もっと現代の家族の実態やお墓の事情にマッチした、しかも地球環境保護にも適った新しい時代の、新しい発想・価値観に基づいた、新しい葬送の実践があってもいいのではないか。そのような着想から、森になる運動は動き始めたという。河野いわく、これは、「心ある罠=仕掛けだ」という!

 次は、哲学の立場から、甲田による『非人称アプローチによる森になるの実践』と題した、ケン・ウィルバーのインテグラル理論と西條剛央の構造構成主義の考え方を、独自に統合して生み出したアプローチである「非人称アプローチ」についての報告であった。私たちは、あるいはこの社会においては、どの分野でも、信念の違い、立場や利害関係の違いから、何が正しいのかをめぐって、ものの見方や世界観、主張などを激しくぶつけ合い、葛藤や闘争などの信念対立を繰り返しているのは周知の事実であろう。この非人称アプローチの趣旨は、我々の眼前に立ち現れてくる現象(これは事実である)に対する自分のものの見方や意見を一旦括弧にいれて絶対視せず、自分と異なるものの見方や意見の存在を認めていくというものである。信念対立のメカニズムは、現実を人それぞれ異なる仕方で認識しているだけなのであり、したがって、誰の認識が絶対的に正しいとか間違っているとかというふうには考えないのである。このように、みんなが自分のものの見方を絶対視しなくなれば、無意味なぶつかり合いはなくなり、もっと生産的なダイアローグ(対話)が可能になると考えられる。その意味で、甲田の報告は、非常に意義深いものといえる。

 次に、心理学の立場から小野寺によって、感謝と愛他的行動との関連についての実証研究の報告がなされた。まず、感謝という道徳的感情の3つの機能について説明された。その後、感謝感情が愛他的行動(思いやり行動)を実際に促進したという実証研究が2、3紹介された上で、今回報告する自身の実証研究の報告に移った。「感謝」というポジティブな感情が、催眠的に質問技法(感謝クエスチョン)でもって喚起=想起させられたとき、それによって被験者は自分の中の感謝体験(他人から与えてもらった経験・助けてもらった経験…)を思い出し、その体験に一時的に浸るということが、その人の気分状態や感情、対人認知(責任帰属)などに具他的にどのような影響を及ぼすのかを検討した。その結果、感謝クエスチョンによって感謝体験を喚起させられた群の被験者は、ポジティブな気分や感情が統計的に有意に増加し、不安や緊張などのネガティブな気分や感情が有意に減少したのである。また、質問紙で測定された仮想物語の登場人物に対する認知(帰属)も、楽観的方向に統計的に有意に変化したという。つまり、感謝感情を引き出された人々は、ポジティブ感情に満たされ、ネガティブ感情は抑制され、他人に対して、寛大な認知をするようになっただけでなく、その人に対する愛他的行動(思いやり行動)が増加したのである。ゆえに、感謝感情が増えると、人間は自我というちっぽけな境界線を超越して、他人や地域社会、川や森などの自然、地球環境に対する愛他的行動(思いやり行動など)が促進され、したがって、今回のシンポのテーマである「森になる」運動にも間違いなく促進的にはたらく可能性が示唆された。小野寺による発表に対する会場からの反響はとても大きく、活発な質疑応答がなされた。

  最後は、再び座長の尾崎真奈美による全体のまとめと、尾崎が長年かけて深化してきたポジティブ心理学の定義やその解説等を行った。ポジティブ心理学の歴史はたかだか十数年であるが、これまでの心理学分野では取り込むことの難しかったスピリチュアリティなどの概念を実証的に研究する道が開かれたという意味において画期的である。
 シンポジウムに割り当てられた時間のぎりぎりまで会場との活発なディスカッションが繰り広げられた。山本幹夫先生や渡辺恒夫先生からの貴重な質問やご指摘もいただきた。今回のシンポジウムを契機に、ますますこの「森になる」運動を発展させるべくシンポジスト一同、取り組んでいきたいと考えている

文責:小野寺哲夫)

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コメント: 4
  • #1

    尾崎真奈美 (月曜日, 19 3月 2012 22:43)

    有意義なシンポでしたね。人の役に立つこと、皆がしあわせになることに関する科学研究というのに関心を持っていただけました。ディスカッションでは考えさせられるご質問も多く、未だに熟成が進むように深まっているのを感じます。
    感謝にはいろいろなレベルがあるのではないかという指摘、もっともだと思いました。
    森になる実践を推進するときに、感謝喚起ワークがいいでしょうね。
    サロンか月例会で実践していきましょう。
    これを通じてますます幸せが広がっていくのが楽しみです。

    また、来月には国会議員の集まりで幸せな社会を作る政策について話し合われるようですが、ぜひ「森になる」運動を提案されてきてください。皆の思いが届きますように、祈り応援しています。

  • #2

    河野秀海 (月曜日, 19 3月 2012 22:55)

    貴重なご縁をつないでくださってありがとうございました。
    とても濃い内容のシンポジウムでした。
    様々な質問に、さらにモチベーションもアップし、今後の展開が楽しみです。
    森になるでのワークもこれから練って行きたいと思います。
    来月の議員会館では、宮脇昭博士のがれきを資源とする300kmの命の森作りもお知らせするつもりでいます。

  • #3

    甲田烈 (月曜日, 19 3月 2012 23:01)

     みなさま、先日はありがとうございました。
     先日の小野寺発表への反響の大きさには、私も感銘を受けました。
     論点はずれるので、あの場ではコメントしなかったのですが、「感謝」の深浅ということは、たしかにありますね。しかし、こうしたときに、「なにがほんとうの感謝か?」という問いのたてかたではなくて、「どのような条件が整ったときに、それを感謝と呼ぶのか?」「あるふるまいが「感謝」だと確信される条件はいかなるものか?」と問う事により、実証ベースも理論ベースも並び立たせることのできる「感謝」の考察ができるのではないかと考えています。

     「感謝」は人によって深さが異なります。けれどその前提をおいた上で、どのような小さな「感謝」であっても、その当人にとって充実した生にむすびつくのであれば、いいのでしょう。熱心にご質問いただいた臨床の方のご意見は、そのことも示唆しているように感じました。

  • #4

    尾崎真奈美 (火曜日, 20 3月 2012 06:13)

    心ある仕掛け、というのは、これを通じて皆が優しい気持ちになっていく、スピリチュアリティなんか大嫌いだという人もいつの間にかスピリチュアルになっていくというところではないかと私は思います。
    意識の発達段階は個人差がありますし、感謝のレベルも様々であってよいと私は思います。ただ、義務ではなく、自発的な感情であるはずだというところがポイントではないでしょうか。自発的というのは、意志ではなく、深いと頃からわき上がるもであり、だからこそ、個人の資質が最も開かれる、フラリッシュにつながるということだと思います。

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