第3回「森になるサロン」報告。感想

2012/02/25 「お墓の現状と新しい慰霊のかたち」報告

○日時:2012年2月25日(土)14:00-16:30

○場所:麹町区民館 洋室B

 

   白田信重さんのお話は、「お墓の現状と新しい慰霊のかたち」というタイトルでしたが、単に現状の報告ではなく、「現状に対する見方」を提示するものでした。

 お墓の歴史を古代・中世・近世〜現代とたどった場合、古代・中世とそれ以降とでは、大きな違いが見られます。それは、「人間は死んだらどうなるのか」という見方が、垂直軸から水平軸へと変化したことです。ここで垂直というのは、亡くなった方たちは現世から離れた世界に趣き、現世とは関わりを持たなくなるというものです。その場合、たとえば「供養」という行為は意味を持ちません。それをすることによって、亡くなった方にもなんらかの影響があるからこそ「供養」が行われるのです。近世以降になると、そうした弔いの形が水平軸に移行します。ここでは、死者は人間関係の中で供養されることによって、あの世での状態が良くなったり、または年に一回現世に還ってくるものとイメージされます。 

   白田さんによれば、現代は水平軸の時代です。垂直的な「宗教的」な感性は薄れています。「墓地」の問題を考えるとき、ここが要だということです。 

 

 では、墓地問題とはなんでしょうか?

 近代において、お墓の歴史の画期となったのが、関東大震災のあった大正12(1923)年です。この年、郊外型大規模墓地である多摩霊園が開園します。当初は、墓地であると同時に公園であるという施設が構想されたそうです。この「郊外型」のモデルが、現代でも墓地需要を満たすために郊外の山林を切り開くという考えのもとになっています。このモデルと同時に、納骨堂の原型となる特設墓地も創られました。これは墓地のスペースに収容できるものです。

 そして、21世紀の今日、この二つのモデルでは立ち行かない事態が出てきています。

 第一に、それは供給の問題です。今から7年後には団塊の世代が亡くなる時期に入り、急速に墓地需要が高まっていきます。郊外を開発して墓地を創るという発想は、この需要をみこしてのことなのですが、自然破壊の問題もあり、限界に達しています。第二に、「無縁墓」の問題です。日本は人口が減少に転じ、墓守をする承継者が減ります。そうすると、「無縁」のお墓が増えてしまうのです。仮に郊外型墓地が増設されたとしても、その多くが「無縁」となってしまうのです。

 

 こうした状況に対して、既存の墓地の「無縁墓」をリサイクルするといったソフトを活用した対策や、墓地に関わるシステムを変えるという対策が考えられます。お墓に対する意識調査に関しては、データのとりかたによっても差異があり、昨年には亡くなったら寺院のお墓に入りたいと考える方が増加したともいいます。お墓は、無理に建てるものではありせんが、依然としてお墓に対するニーズは強く、「子どもに迷惑をかけたくない」という理由で、生前に墓を買うケースもあれば、同じ理由で「自然葬」を望むケースもあります。

 ところで、お墓に対する意識が多様化する中で、弔われ方にも「自己決定権」や「私らしさ」が追求され、ポストモダンの風潮もあいまって、故人が生前に好きだった物に墓石をかたどる「デザイン墓」や、海や山への鎖骨をすすめる「自然葬」が生まれてきました。けれども白田さんは、この二つの一見新しい形式も、さきほどの水平軸の「見方」から脱していないといいます。なぜならば、前者の場合は、あくまで現世的な観念の中で故人が偲ばれており、後者では「家」制度への反発や現世における自然循環の中で、故人の行方が考えられているからです。

 

 人の死についてかんがえるときのポイントは二つある、と白田さんはいいます。1つは死んだらどこに行くのかという「永世」の観念であり、もう1つは死者だけでなく、遺された人々がある行為に携わることによって「安心」するという「救済」の観念です。今までの自然葬にしても、この二つの要素を備えてはいません。ここで重要となってくるのが垂直的な救済の観念=宗教性なのではないかという問題提起がありました。 

 

 10名ほどの参加でしたが、討議は活発に行われました。「人に迷惑をかけたくない」という感覚をめぐり、人間は本来人に迷惑をかけて生きるのがあたりまえ」という考えや、垂直軸は意見の対立を招くので、あくまで水平軸の中で対策を考えていけばいいという意見、そして、こういう話し合いの場自体に意義を見いだす意見など、深い関心をゆさぶられるようで、参加者一人ひとりが真剣に考えているさまが伝わってきました。

 

 最後に、私自身の感想をつけ加えておきます。

 今年の3月に、ポジティブ心理学の研究者たちとともにシンポジウムをさせていただきます。そのため、このお墓をめぐる現状の話はぜひとも聴いておきたいものでした。ポジティブ心理学という視点からは、「森になる」への関わりは愛他行動の促進という側面を持ちます。「人は生きてきたように死ぬ」という言葉がありますが、周りのお世話をしてきた方のほうが、安らかな死を迎えられるかもしれません。しかし、ポジティブ心理学の枠組みだけでは、垂直軸の「救済」という宗教的側面が、うまくすくえない気がしています。なぜならば、それは生者のみではなくて、死者との関わりもでもあり、そしてなによりも「生」と「死」を一連なりの「生死」として捉える「視点」を要求するからです。そうした意味で、樹木葬における「宗教性」の問題にむかいあう上でも、白田さんの講演は大変に考えさせられるものでした。

(文責:甲田烈)

「お墓の現状と新しい慰霊のかたち」感想
 白田信重さんの講演会に参加して来ました。
生命には全てその「命」が発生した瞬間にもれなく「死」がセットされるのでしょう。人とはその「死」のスタイル(形式)や形状を意識する唯一の動物かもしれませんね。この人間の心理的側面を掘り下げながら、現在のお墓事情の有り方や形式についての大変理解し易い解説でした。まさに現役墓石屋さんでありまた、心理研究者ならではの見解と、目から鱗。
 異業種の参加者、その皆さんからの意見や発言、提案まで飛び交う参加型となりました。
 他人事としてでは無く「自分ごと」として考えられるテーマ及び白田氏の解説は大変勉強になりました。続編をリクエスト。「乞うご期待」(笑)

(文責:石島葉子)

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