呼吸する壁

  20歳のころに何がきっかけだったか、ある友人が実家の福井県に帰郷して、陶芸の職業訓練校で勉強しているというので訪ねてみた。その彼の知人が登り窯を自作しているというので見学に行った時の体験が、思い返してみると今も私の枠組みの大きな一つに関与していることに気がついた。

 登り窯は緩やかな斜面を活用した築窯法で、平らな地面に穴を掘って造る穴窯よりもはるかに温度が上がり、熱効率もよくて火の回りも概ね均質なので全国的に普及しているらしい。その後訪れた沖縄の焼き物が盛んな地域の壷屋辺りも、坂の多いエリアでどの窯元も登り窯であった。

 割った竹を何本か荒縄で縛って両端を地面に埋めてアーチを作り、その上に耐火レンガを積んで綺麗なアーチが造られていた。一通り見せてもらってすぐそばの休憩小屋で、一服の抹茶をいただいたことも鮮明な記憶として懐かしい。細くなって摩耗した茶筅で点てられた抹茶は、粗にして野ではあったが、何故かしらとても豊かな時空であった。

 床もない地面のままの掘っ立て小屋のような茶室で腰掛けながら、日本の精神をその主は咄咄と聞かせてくれた。日本建築の壁は西洋と違って、コンパートメントととして自分と外部を隔てるものではないこと。西洋では個人と個人を壁で仕切るが、日本は襖で仕切って広間が優先されること。日本人の生活は古来より自然と共にあり、座敷と壁と庭と山は一連なりで、その壁は私と山とを呼吸して循環させていることなどなど‥

 そういえば、かつて気功をしていた20年前ころ耳にした気功の身体観にも通ずる点だと思い出した。即ち、皮膚は自分と外界を隔てるものではなく、外界と自分とをつなぐものであるいう捉え方であった。

 名も顔も覚えていない作陶家だが、茶のお持て成しの精神に初めて触れさせてくれ、日本の心を目覚めさせてくれた一人として、今も心の深くに残る人物である。古来の日本では目利きといわれる数寄者たちが、こういった職人を大切にして来て、日本人の心、和の精神が受け継がれてきたに違いない。

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