はじめてのお勤め:重いお布施

 「はじめてのお使い」ならぬ、僧侶としてのはじめてのお勤めの話‥

 僧として‥というのは、すなわちお経を上げてお布施を頂いたという事なのだが、実家のすぐ近所の小さなアパートに住んでいるご夫婦があった。

 ご主人は定年になったばかりか平日の昼間にご在宅だったが、部屋に入るといかにもよくお経が上がっているといったお仏壇がある。 

 よく人相、家相というが、墓相ともいうように、お墓やお仏壇からもいろいろなことが伝わってくるものである。一般の家庭には少し不似合いなくらいの大きなお輪と大きな黒い木魚‥
 お仏壇の1対の仏花は、花の正面がこちら向きではなくお仏壇の内側に向いている。

 

 「お兄ちゃんに見えるように、あちらに向けているのですよ‥」、背後から奥様の声。 「実は‥息子は筋ジストロフィで、成人する前に亡くなったのです…」、ご主人が聞かず語りに口を開いた。

 当時住んでいたニュータウンの人口が10万人で、筋ジストロフィが10万人に一人の難病であること。
 そのニュータウンで、どうしてこの子だけが‥と、とても悔しい思いをしたこと。
 筋力が落ちてきて、ずっと寝たきりになってからは褥瘡(じょくそう=床ずれ)が酷くて、仙骨の下に手を入れてあげて毎晩朝まで手がしびれていたこと…

 息子さんが亡くなって数年経ったそのときも、その息子さんが不憫で可哀想でならなくて、日に何度も語りかけるようにお仏壇にお経を上げているのだという事であった。
 そのようなご家庭のお仏壇で、お経をあげたのが初めてのお勤めだった。 お勤めが終わった後に差し出されるお布施の包み‥

 「私のあげたお経で、この息子さんが、このご夫婦がほんとうに救われるのだろうか‥?」 「このご夫婦ほど一心不乱に熱心にお経をあげているだろうか‥?」

 そう思うと、とても痛いほどの重いお布施だったことは今も大きな記憶として残っている。

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